7:30 起床
今日は、朝一番でグエル邸、午後はモンジュイックの丘、夜はカタルーニャ音楽堂で「Barcelona Guitar Trio & Dance」を観る予定。前回のバルセロナ訪問時(2025年2月)は、時間が足りずモンジュイックを断念した。
8:00 朝食
昨日開発した生ハムサンドイッチのパンにオリーブオイルをかけることを思いつく。ついでにチーズも挟んで、生ハムチーズサンドイッチに進化。オリーブオイルでしっとりして、さらに美味しくなった。


10:00 グエル邸
開場時間に入場したかったので、チケットは事前に手配した。


グエル邸について
グエル邸(Palau Güell)は、アントニ・ガウディが実業家エウゼビ・グエルの依頼を受け、1886年から1890年にかけて建設した邸宅。1984年にユネスコ世界遺産「アントニ・ガウディの作品群」の構成資産として登録された。
昨日訪問したコロニア・グエル教会と同じく、ガウディの最大のパトロンだったグエルの依頼による建築だが、こちらはグエル一家の住居であり、社交界の人々を招く迎賓館としての役割も担っていた。
ガウディが30代で手がけた初期の代表作で、後の作品につながる独創的な建築技術や造形表現が随所に見られる。
【馬小屋】
地下に降りると、そこはかつての馬小屋(厩舎)。馬車で訪れた客を降ろした後、馬はスロープを通ってここに移された。
レンガ造りの太い柱は、上部がキノコのように広がり、複雑なアーチを描く天井を支えている。実用的な馬小屋にまで、ガウディの独創的な設計が施されている。




地底にも世界があったら、こんな光景が広がっているに違いない。
1階に戻って階段を上る。ここではガウディらしい意匠は特に見当たらない。金持ちの大邸宅の王道、といった感じの階段だ。


ガウディ設計のステンドグラス
【団欒の間】
グエル一家が家族や親しい友人と過ごした部屋。娘たちはここでピアノを練習し、演奏会も開いていたという。
当時のものと思しきピアノ。窓には歴史画のエッチングが施されたすりガラスと、色鮮やかなステンドグラス。実業家というよりは貴族の邸宅のようだ。



【ダイニングルーム】
木製の扉の先にはダイニングルームがある。

テーブルと椅子は、グエル一家が実際に使用していたものだという。天井には幾何学的な装飾が施された梁が並び、工芸品のようだ。奥には豪華な暖炉まである(あれ、バルセロナって暖炉必要?)。「団欒の間」にも増して、贅を尽くした空間だ。


【奇妙な構造物】
淡い色彩のステンドグラスの廊下を通って裏庭に出ると、奇妙な構造物が目に飛び込んできた。金属の骨組みと鮮やかな色のタイルが組み合わされ、巨大なカブトムシ・ロボットの背中のようだ。


調べてみると、出窓(張り出し窓)とその可動式の鎧戸(よろいど)だそうだ。木製の細長い羽根板(ルーバー)の角度を変えることで、採光や通風を調整できる。その上には、鉄と木を組み合わせた日よけがあり、主寝室のバルコニーを覆っている。奇抜に見えるが、非常に実用的な設備だったのだ。

ガウディは、昆虫の体の仕組みから羽根を動かす構造の着想を得たのかもしれない、と妄想。
その奥には、シンプルなデザインの部屋があった。ビリヤード室であり、グエル家の娘たちが絵画や彫刻を制作するアトリエでもあったという。家族が日常を過ごす空間だから、華美な装飾は必要なかったのかもしれない。

【失われた足跡の間(Hall of Lost Steps)】
中央サロンへ向かう途中に通る空間。木製の格天井に配された黒っぽい金属装飾が、宝石のように鈍く輝いている。


【客人の待合室(Visitors’ Hall)】
中央サロンに通される前に客人が待機した部屋。格天井には金箔を施した鉄の装飾が組み合わされている。グエルとの面会直前、この豪華な金色の天井が、客人の心を高鳴らせたのかもしれない。


客人を迎えるための二つの空間。隣り合っているのに、これだけ雰囲気が違う。なんとも贅沢な設計だ。
【中央サロン】
客人になった気分で中央サロンに入る。豪華絢爛、という一言では済まされない何かがこの部屋にはある。


天井を見上げると、ガウディのコスモ(小宇宙)があった。
大きな星を小さな星々が囲んでいるようにも、超新星爆発で星の欠片が飛び散っているようにも見える。これまでガウディ建築では、カサ・ミラの屋上でコスモを感じたが、屋内では初めてだ。


グラナダのアルハンブラ宮殿で見た天井を思い出す。

【3階】
3階に上がると、ドーム型の天井だけでなく、ステンドグラスや金色の装飾もコスモの一部を成していることが分かる。光を湛えた、煌びやかな小宇宙。


パイプオルガンも見える。グエル家は音楽好きだったようだ。

カサ・ビセンス同様、トイレも美麗。

【4階】
4階は展示スペースになっており、訪問時は「GAUDÍ: Finestres al Futur(未来をひらく窓)」という企画展が開催されていた。
「未来をひらく窓」と日本語があったので、よく見るとYKKの社名があった。日本のYKK APとグエル邸による共同企画だという。最近ヨーロッパで日本語表示を見ることは少ないので、こんなところで日本企業の名前に出会うとは、ちょっと嬉しい。


企画名どおり、ガウディ建築の窓に焦点を当てた展示だった。


【屋上】
屋上には中央サロンのドームから突き出した塔を中心に、たくさんの煙突があった。




石でできた原始的なもの、茶色のレンガでできたもの、モザイク装飾を施したものなど、煙突のデザインには統一感がない。






これだけ多様な素材、色彩と形状を用いながらも、屋上全体を見渡すとガウディの世界になっている。

しかし、この屋上にコスモは感じなかった。
ガウディは、グエル邸の建築に関して予算的な制約を受けなかったそうだ。だからこそ、彼は中央サロンの天井に自身のコスモを思いのままに展開することができたのかもしれない。

映画もテレビもなかった時代、この邸宅を訪れた客人は、あの天井をもう一度見たくなったのではないか。そして、それこそがグエルの狙いだったと思う。

出口に向かう階段の手すりに照明が当てられていた。なんだろうと見てみると、複雑な形状の手すりの影が壁に浮かび上がっていた。当時の客人も、帰り際にこんな仕掛けを見つけたら感心したことだろう。



12:00 レイアール広場
昼食を取る予定のレストランが13時オープンなので、レイアール広場を再訪して、ガウディがデザインしたガス灯を見る。


夜には見えなかった、翼を広げた鳥と支柱に巻きつく蛇の装飾。1879年、ガウディが建築学校を卒業した直後に手がけた初期の仕事のひとつだが、すでに独創的なデザインだ。


レストランに向かって旧市街を歩いていると、とあるレストランの入口に見慣れたキャラクターを発見。


なんと、アニメーション映画『イエロー・サブマリン』のジョージ・ハリスンだった。店名「Los Caracoles」の「Los」と「Caracoles」の間に、ジョージの顔がある。いたずらかと思ったが、妙にハマっているので、ジョージ好きなオーナーがシールを貼ったのかもしれない。


ちなみに、この店は1835年創業の歴史あるレストランだ。
13:00 昼食
レストラン「Grill Room(Bar Thonet)」でランチ。この店でも入口近くに魚介類がディスプレイされている。どれも新鮮そうだ。


オリーブの盛り合わせ、マテ貝の炭火焼き、ローストチキンのクロケッタ、タコの炭火焼き(ジャガイモとピリ辛マヨネーズ添え)、マグロの腹身(赤ピーマンとオリーブペースト添え)を注文。


スペインではポピュラーなマテ貝だが、初めて食べる。クロケッタ(コロッケ)は必ず食べるようになった。


頼みすぎかと思ったが、一皿ごとのボリュームはそれほど多くない。特にメインのタコの炭火焼きとマグロの腹身は、素材の味を活かしたシンプルな調理で、日本料理のようにあっさりと食べられた。


普段は食べないデザートも、クレマ・カタラーナ(マレスメ産イチゴ添え)まで完食。郷に入っては郷に従えだ。

14:30 モンジュイックへ
モンジュイックへは、まずパラレル駅で地下ケーブルカー(フニクラ)に乗り、モンジュイック公園駅まで行く。


モンジュイック公園駅でロープウェイに乗り換え、モンジュイック城へ。

ロープウェイに乗る頃に小雨が降り始めた。ロープウェイからはバルセロナの街並みと地中海を望むことができるが、あいにくの曇り空になってしまった。


モンジュイックについて
モンジュイック(Montjuïc)は、バルセロナの南西部、地中海に面した標高約173mの丘。頂上には17世紀に起源を持つモンジュイック城があり、バルセロナの街並みや港を一望できる。
1929年のバルセロナ万国博覧会、1992年のバルセロナオリンピックの主要会場となった場所でもあり、現在はカタルーニャ美術館をはじめとした美術館や博物館、庭園、スポーツ施設などが集まる文化・観光エリアとなっている。

15:00 モンジュイック城
ロープウェイを降りてすぐのところに、モンジュイック城はあった。

モンジュイック城について
モンジュイック城(Castell de Montjuïc)は、バルセロナの街と港を見下ろす丘の頂上にある城塞。17世紀に築かれ、18世紀に現在の姿に改修された。かつては軍事要塞や政治犯の収容施設として使われたが、現在は一般公開されており、バルセロナの街並みや地中海を一望できる。
地中海に向かって大砲が設置されており、かつてここが軍事要塞だったことを実感する。


石橋を渡って城に入る。


広々とした「パレード中庭」に出る。中庭に入る頃には天候が急速に回復し、青空が広がり始めた。


屋上テラスに上ると、バルセロナの街、港と地中海を一望できる。




遠くにサグラダ・ファミリアが見える。肉眼では識別できないが、その先の丘にはグエル公園があるはずだ。


そういえば、数日前に訪れたサグラダ・ファミリアの受難のファサードとグエル公園の高台から、この丘が見えた。逆もまた真なりだ。
日差しを浴び、風を感じながら遠くを眺める。いいリフレッシュになった。
16:30 カタルーニャ美術館
モンジュイックの丘には様々な施設があり、すべてを回ることはできない。次はカタルーニャ美術館に行くことにした。かなり距離があるのでバスで移動するつもりだったが、運よくタクシーを拾うことができた。

カタルーニャ美術館について
カタルーニャ美術館(正式名称:カタルーニャ国立美術館、Museu Nacional d’Art de Catalunya/MNAC)は、モンジュイックの丘にある美術館。1929年のバルセロナ万国博覧会のために建設された国立宮殿(Palau Nacional)を利用している。中世から20世紀までのカタルーニャ美術を中心に収蔵し、特にロマネスク様式の教会壁画のコレクションは世界有数の規模を誇る。
この美術館には膨大な数の美術品が収蔵されているが、時刻はすでに16時半。目玉とされるロマネスク様式の教会壁画を中心に観ることにする。


ドーム状のスペースに展示された教会壁画。いったいどこの教会から壁画を剥がして移送してきたのだろうか。


中世の宗教画にしては、ずいぶん鮮やかな色使いだ。

出口に向かうと、壁の一部が額縁のようにくり抜かれ、景色が切り取られていた。


ここだけの話、この美術館で一番印象に残ったのは、この「絵」だった。
カタルーニャ美術館を出て、スペイン広場を見下ろす。垂直にそびえ立つ白と赤の塔のようなものに、強烈なインパクトを受ける。
手前の4本の白い柱は、カタルーニャ州旗の4本の赤い縞を象徴する記念碑。1923年に建設されたが、独裁政権によって1928年に撤去され、2010年に再建された。その奥に立つ2本の赤い塔は、1929年のバルセロナ万国博覧会に合わせて建設された「ヴェネツィアの塔」。


地下鉄の駅に向かって、ひたすら丘を降りる。







19:30 カタルーニャ音楽堂
ホテルに戻って少し休憩してからカタルーニャ音楽堂へ。

カタルーニャ音楽堂について
カタルーニャ音楽堂(Palau de la Música Catalana)は、「ガウディのライバル」と称されることもある建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーが設計し、1908年に完成したコンサートホール。カタルーニャの合唱団「オルフェオ・カタラ」の本拠地として建設された。ガウディと同時代のモデルニスモ建築を代表する傑作で、1997年に世界遺産に登録された。ステンドグラス、モザイク、彫刻などを組み合わせた華麗な装飾が特徴で、特に太陽を象徴する逆さドーム型のステンドグラス天井が有名。
カタルーニャ音楽堂には有料の見学ツアーもあるが、こうしてコンサートを観にくるのが一番だ。公演によって異なるが、早めに入場すれば開演までの時間を使って、館内の装飾をじっくり楽しめる。
公演スケジュールは公式ホームページでチェックすることをお勧めする。
カタルーニャ音楽堂公式ホームページ↓

開演1時間前に入場。最初に2階に上がる。


2階から劇場全体を眺める。この時間なら、まだ観客はまばらなので、他人に気を遣う必要もない。
長方形のステンドグラス天井から、緑色の梁、花のような形の金色の柱、場内を取り囲むステンドグラス、パイプオルガン、客席の配置に至るまで、ため息が出るほど美しい(実際、何度か出た)。





3階に上がって天井のステンドグラスと装飾を眺めているうちに、あっという間に1時間が経ってしまった。






20:00 Barcelona Guitar Trio & Dance
3月にチケットを購入したので、最前列の席を取ることができた。


ステージの壁面には、18人の音楽の女神が並ぶ。上半身は立体的な彫刻、下半身は平面的なモザイクで表現されている。まさに音楽堂といった雰囲気だ。




今夜のコンサートは、ギター・トリオ+パーカッションと男女のダンサーによるパフォーマンス。

「Barcelona Guitar Trio & Dance」のプロモーションビデオ↓
最初にギター・トリオが演奏。時に優しくハモリ、時に激しくユニゾンする。三人とも超絶技巧のギタリストだ。

演奏曲はスペイン音楽が中心だが、チック・コリアの「スペイン」やマイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」といったポピュラーな曲も登場する。
特に「ビリー・ジーン」は、三人のギタリストとパーカッショニストが一本のギターを寄ってたかって演奏するのが楽しい。
公式動画にスペイン音楽と「スペイン」「ビリー・ジーン」の演奏があったので、リンクを貼っておく。
スペイン音楽↓
スペイン↓
ビリー・ジーン↓
コンサートの途中から男女のフラメンコダンサーが加わる。
グラナダとバルセロナのタブラオでもフラメンコを観たが、今回の踊りはよりショーアップされ、洗練されたパフォーマンスだった。
21:30 終演
客席の歓声に、パフォーマーたちが笑顔で応える姿もよかった。


終演後の様子↓
終演後に天井のステンドグラスを真下から見上げてみた。なるほど、静かに燃える太陽に見える。


入口では、ギター・トリオが即席のサイン会を開いていた。


23:30 就寝
気分よくホテルに戻り、早めに就寝。

