Day 16【Barcelona: Cripta de la Colònia Güell】(2026/5/7)

colonia-guell 2026 Spring UK & Spain – Van Morrison, la Alhambra and Gaudí

8:30 起床
今日はあらかじめ決めた予定がないため、ゆっくりと始動。

天気が良さそうなので、少し足を延ばしてコロニア・グエル教会まで行くことにする。バルセロナの中心部から片道1時間ほどかかるため、前回バルセロナ訪問時(2025年2月)は断念したのだ。その後の予定は未定。

9:00 朝食
サラダをたっぷり食べる。いろいろ試してみたが、生ハムはパンに挟んでサンドイッチにして食べるのが一番美味しい。

陽の光をたっぷり浴びて育った野菜
パンをナイフで切って自作したサンドイッチ

濃厚なチョコレートクッキーを食べる合間にホオズキをつまむと、ほんのりとした酸味が口直しになる。

ホオズキがいい口直し

10:00 ホテル出発
コロニア・グエル教会へは地下鉄と鉄道を乗り継いで行く。

カタルーニャ広場駅

異国の駅で電車のチケットを買うのは、案外むずかしい。券売機のユーザーインターフェイス(UI)が国によって異なるからだ。目的地は路線図から指定するのか、それともアルファベットで検索するのか。UIは、その国の文化や思考プロセスに基づいて設計されているので、初見でチケットの買い方が分からないときは、徹底的に分からない。

今回は「T-mobilitat」という交通系ICカード(日本のSuicaのようなもの)を購入したい。言語を英語に切り替え、画面の指示通りに進めると、スムーズに購入できた。スペインとは相性がいいようだ。

恐怖の券売機
買えた!

11:20 コロニア・グエル駅
コロニア・グエル教会の最寄り駅に到着。

コロニア・グエル駅
無人駅だった

コロニア・グエルについて
コロニア・グエルは、バルセロナ郊外にある工業集落。1890年、実業家エウゼビ・グエルが繊維工場を移転し、労働者とその家族のために建設した。工場と住宅だけでなく、学校、文化施設、教会なども整備され、一つの街として機能していた。建物の多くは当時のカタルーニャのモデルニスモ建築家たちによって設計され、現在もその街並みが残っている。

最盛期には1,000人を超える労働者が働いていたが、繊維産業の不況によって1973年に工場が閉鎖。その後、住宅は住民に売却され、工業集落としての歴史に幕を下ろした。現在は歴史的な街並みを保存しながら、人々が暮らし続けている。グエルはガウディの最大のパトロンの一人で、街の教会の設計を彼に依頼した。

教会の入場チケットを販売しているインフォメーションセンター(IC)へは、歩道上の青い「足跡マーク」についていけばよい。

青い足跡についていく
インフォメーションセンター

ICでチケットを購入して2階に上がると、ちょっとした博物館になっていた。街を散策する前の予習にピッタリだ。

2階の展示スペース
コロニア・グエルの合唱団に関係する旗
コロニア・グエル俯瞰図
コロニア・グエル模型

12:10 コロニア・グエル教会
ICから教会へは徒歩数分。

コロニア・グエル教会

コロニア・グエル教会について
コロニア・グエル教会は、ガウディが設計した未完の教会。1908年に着工したが、1914年にガウディが建設から離れ、壮大な教会の計画は実現しなかった。現在残っているのは、地下聖堂(クリプタ)に相当する下層部分と入口のポーチで、2005年に世界遺産に登録された。

この教会は、ガウディがサグラダ・ファミリアに応用するさまざまな建築技術を実験した場所として知られる。特に有名なのが、紐と重りを吊るして建物の構造を検討する「逆さ吊り模型」。重力によって自然に生まれる曲線を上下反転させることで、柱やアーチの合理的な形を導き出した。いわば、サグラダ・ファミリアの実験場だったのだ。

逆さ吊り模型
教会建設当時の写真と建築模型

教会を見て、ある考えが頭に浮かんだ。これ、ロッキーじゃないか。映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』に登場する異星人ロッキーである。クモや甲殻類に似た五角形の多足生物であるロッキーのデザインは、この教会にインスパイアされているのではないか。グエル公園の「洗濯女の回廊」や「高架橋」でも感じたことだが、疑いがますます強くなった。

コロニア・グエル教会
ロッキー

まず教会の外観を見る。未完成ではあるが、サグラダ・ファミリア以上に独創的なデザインだ。ステンドグラスがはまった窓の形状はどこか神秘的。

独創的なデザイン
奇妙な形の窓

外壁には蝶や魚の装飾が施されており、直接的に「自然」が表現されている。

蝶の装飾(中央)
魚の装飾

一見原始的だが、自然との調和と神秘性が緻密に計算されたデザインは、きっと柱の角度が10度ずれても、屋根が30cm低くてもダメなのだ。ガウディにとっては「これしかない」という設計になっているように感じる。当然、十分な強度も担保されていることだろう。

教会入口の屋根
絶妙な角度で据えられた柱

教会の前のポーチにはベンチが設けられ、ちょっとした休憩所のようになっている。

ポーチ
ポーチから教会入口方向を見る

教会に入ろうと歩を進めるが、素朴で華やかな装飾に足が止まる。グエル公園にもあった、トレンカディス技法のモザイク装飾だ。

教会入口
魚が泳ぐ天井の装飾

モザイクの前には一羽のツバメ。ここでも建築と自然が融合している。

モザイクの前に一羽のツバメ

教会に入って驚いた。

なんだこれは!

複数の柱が複雑な造形の天井を支えている。まるで室内に森があるようだ。

こんな建物は見たことがない
森のような教会内部

正面の祭壇を中心に、周囲をステンドグラスが取り囲む。

正面の祭壇
ステンドグラス

色彩豊かなステンドグラスは、まるで子供が無心に描いたような素朴な模様だ。

モチーフは花に停まった昆虫?
クレヨンで描いたような色彩

太陽が動くたびに、床に映るステンドグラスの色彩と形も変化する。シンプルだが、ここでもガウディの「光と影のショー」は健在だ。

光と影のショー
素朴でいい

出口の方を見ると、暗く厳かな雰囲気。

出口の方を見る
絵画も厳かな雰囲気を醸す

椅子のデザインも実にガウディ的。実際に座ってみると、体がすっぽりと収まった。目に美しく、機能的。人間工学的なデザインだ。

教会内に無数に並ぶ椅子
ガウディがデザインした椅子

聖家族像(マリア、少年イエス、ヨセフ)の横に階段があった。

聖家族像
階段

立ち入り禁止のロープもないので、上ってみると思いがけず広い空間があった。何のためのスペースだろう。

2階のスペース
出口方向を見る

ここからは教会内部を見渡せる。祭壇やステンドグラス、天井も間近に見える。この世のものとは思えない、異形の建築だ。

祭壇
天井の構造がよく見えるが、理解はできない
間近に見るステンドグラス
天井

教会を出て屋上に行くと、造りかけの構造物と鐘楼があった。

屋上
造りかけの構造物
鐘楼

周辺には、建設に使われるはずだった石材も残されている。

残された石材
石材の説明図

ツバメの鳴き声を聞きながら、「もし、この教会が完成していたら」と想像してみる。

完成予想図
完成予想模型

未完成の小さなコロニア・グエル教会だが、ガウディのエッセンスを濃縮したような独創的な魅力を持つ建築物だった。「完成していないのに、完成している」と感じるのはなぜだろう。

13:30 コロニア・グエル散策
工業集落として栄えた頃の街並みが残っていると知り、散策しながら駅に戻る。

コロニア・グエルの名所を示す案内図

【コロニア・グエルの中心広場】
中央には、街を築いた実業家エウゼビ・グエルの記念像が立つ。

中心広場
エウゼビ・グエルの記念像

【旧繊維工場】
かつての繊維工場。門には「COLONIA GÜELL」の文字が残り、その奥にはレンガ造りの工場と高い煙突がそびえている。

旧繊維工場の門
高い煙突が印象的な旧繊維工場

【カ・レスピナル】
ガウディの協力者ジョアン・ルビオが設計した、かつての工場幹部の住宅。円筒形のバルコニーや菱形の装飾など、レンガを駆使した独創的なデザインが目を引く。

工場幹部の旧住宅
円筒形のバルコニーが面白い

【工場労働者が暮らした住宅街】
今も住居として使われており、色とりどりの外壁を鮮やかな赤いブーゲンビリアが彩る。

かつて工場労働者が暮らした住宅街
ブーゲンビリア

【旧教師住宅】
まるで小さな城のような住宅。設計したのはガウディの協力者、フランセスク・ベレンゲールとされる。

旧教師の住宅
レンガを重ねた屋根と鋭い尖塔が印象的

【ビブリオテカ・ポプラール・ジョアキン・フォルゲラ】
レンガで縁取られた独特な形の窓が印象的な旧図書館。

旧図書館

【テアトレ・フォントバ】
工場労働者たちの娯楽や文化活動を支えた劇場。現在も地域の文化施設として使われている。

旧劇場

【カ・ロルダ】
石積みの壁とレンガの装飾が印象的な建物。とりわけ、透かし模様を施した煙突の造形が面白い。

カ・ロルダ
煙突が印象的

この、工場を中心に生まれた街に、グエルはガウディの教会を建てようとしたのだ。

ガウディの教会を見に来たつもりが、街をじっくり歩くことでグエルの街づくりに込めた志が見えてきた。単に労働者を住まわせるための住宅地ではなく、働くこと、学ぶこと、楽しむことが一つの街の中で完結するように造られていた。

この後の予定を決めてこなくてよかった。

【街路樹の大発見】
駅付近まで戻ったとき、何気なく見た街路樹に「あっ!」となった。この幹から枝が分かれる部分の独特な形状は見たことがある。

独特な形状の街路樹
この枝の分岐は見たことがあるぞ

いや、さっき見たばかりだ。教会内部の柱の形状に似ているのだ。

グエル教会内部
手前の2本の柱の形状が街路樹のようだ

他にも見覚えがある。サグラダ・ファミリアの柱の方がそっくりだ。

街路樹
サグラダ・ファミリアの柱
サグラダ・ファミリア内部
樹木にしか見えなくなってきた

コロニア・グエル教会を手掛けていたガウディは、こんな木を見て柱のデザインの着想を得たのかもしれない。

「人間は創造しない。人間は発見し、その発見から出発する」というガウディの言葉※を思い出した。
※出典:東京国立近代美術館「ガウディとサグラダ・ファミリア展」(2023年)公式資料

そして、その百年以上後に『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のスタッフがグエル教会を見て、「ロッキー」のヒントを得ていたとしたら、こんなに面白い話はない。

コロニア・グエル教会

16:00-18:00 ホテルで昼寝 
いささか疲れたので休息。

18:30 夕食
事前にチェックしておいたレストラン「LA FLAUTA」で夕飯。

レストランのテラス席
LA FLAUTA
新鮮そうな魚介類
今日のパエリア?

前菜代わりにパドロン・ペッパー(青トウガラシ)の素揚げを注文。海の幸が評判の店なので、タラのアイオリ・蜂蜜ソース、オマール海老のパエリアも頼んだ。どれも素材の味を生かした素朴な味付けで美味しい。

それほど辛くなかった青トウガラシの素揚げ
甘めの味付けのタラのアイオリ・蜂蜜ソース
海鮮の旨みがたっぷり出たパエリア
店内の様子

昼ごはんがバナナ一本だったので、デザートにチュロスまで注文。ホットチョコレートにつけて食べると、疲れが吹き飛んだ。

チュロスとホットチョコレート

19:40 レコード屋廻り 
Google Mapsで調べると、まだ営業中のレコード屋があったので行くことに。

【Daily Records】
ビートルズのスペイン盤LPを4枚購入。

Daily Records
オリジナルアルバム3枚とコンピレーション1枚

【Revolver Records】
ビートルズのシングルを2枚と、ジョン・レノンのシングルを1枚購入。

Revolver Records
ビートルズのシングル2枚とジョンのシングル1枚

ジョンの「Power to the People」はPlastic Ono Band名義ながら、ジャケットにはビートルズ時代のゲット・バック・セッションの写真が使われていて面白い。「Paperback Writer」はオランダ盤、「Let It Be」はフランス盤だけど、いいスペイン土産になった。

まだ日が落ち切らず、昨夜とは違う表情を見せる旧市街を散策。

タイル装飾
カテドラル
ザ・旧市街
華やかな装飾のある通りも
カテドラル周辺
王の広場

21:00 夜のガウディ建築巡り
ホテルにレコードを置いて一休みした後、ライトアップされたガウディ建築を観るために再び街へ。この期に及んでまだ活動を終えないとは、我ながら貧乏性というか、なんというか。

【サグラダ・ファミリア】
光と影のコントラストが強まってより立体的に見える。塔の先端の星が輝き、美しく夜空に浮かび上がる。

サグラダ・ファミリア
生誕のファサード
受難のファサード
聖母マリアの塔

教会内部に照明があるため、ステンドグラスが外に向かって光を放っている。これは昼間は見られない神秘的な光景だ。

生誕のファサード側のステンドグラス
受難のファサード側のステンドグラス

池の水面にサグラダ・ファミリアが映ると聞いて公園に行ってみたが、期待したほど映っていない。今夜は生誕のファサードの左側のライトが点いておらず、光量不足のようだ。

公園の池付近からサグラダ・ファミリアを臨む
ステンドグラスは綺麗に映っている

【カサ・ミラ】
波打つような石造りの外壁は、ライトアップによって陰影が深まる。

カサ・ミラ
ベランダが立体的に見える

しかし、それ以上に面白いのが入口から覗く内部だ。昼間はよく見えなかった天井の起伏と淡い色彩の天井画が、照明の光で浮かび上がる。

入口の扉
扉の隙間から覗くと・・・

【カサ・バトリョ】
外壁のベランダに陰影が付き、大きな窓から漏れる光とともに、昼間とは印象が大きく変わる。

グラシア通り
カサ・バトリョ

昼間は青のイメージだった2階のメインサロンは、赤い明かりが灯されて雰囲気が違う。

夜は赤を基調としたライトアップ
メインサロン

屋上のドラゴンの背中は、照明に照らされてなまめかしい。

昼間はあまり目が向かなかった屋上部分
よりなまめかしいドラゴンの背中

カサ・バトリョを見終えた時点で23時。夜も更けたので、地下鉄でホテルに戻る。

人影もまばらな地下鉄のホーム
カタルーニャ広場駅に戻ってきた

25:00 就寝
コロニア・グエルを訪問したことで、自然を模倣してデザインするというガウディの建築思想を、はじめて深く実感できた。

昨夜、ガウディは「光と影の魔術師」だと思った。今夜、ライトアップされた建築物を見て、その思いがさらに強くなる。

夜にしか現れない美しさがあるのだ。

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