【Bobby Rush Billboard Live TOKYO】(1/5-6/2026)

bobby-rush Bobby Rush

ボビー・ラッシュのこと
ボビー・ラッシュといえば、映画『The Road to Memphis』(2004年公開)。マーティン・スコセッシが製作総指揮を執る『THE BLUES Movie Project』の7本のドキュメンタリー映画のうちの1本だ。

THE BLUES Movie Project [DVD]
マーティン・スコセッシ製作・総指揮。ブルース誕生100周年記念作品「THE BLUES Movie Project」再発! 映画と音楽を愛する7人の監督が、世界中のミュージシャンとともに奏でる感動の旅。「ブルース」心の底から湧き上がる音と言...

映画はメンフィスのジュークジョイントでのボビーのライブシーンから始まる。女性ダンサーが扇情的に尻を上下に振り(「Ratchet」と呼ばれるダンス)、ボビーは「あんた、こういうの好きだろ?」と男性客をイジる。さらに「でも、このデカ尻は俺のもんだ!」と煽る、ギトギト、コテコテのファンキー・ブルースだ。

この記事を書くために映画を見直したところ、ボビー・ラッシュの出番はごく一部で、B.B. キング、ロスコー・ゴードン、アイク・ターナーといったブルースマンの方がフィーチャーされていた。DVDのジャケット写真の影響も大きいけれど、長い間『The Road to Memphis』は、ボビーが全編登場する映画だと記憶していた。それほど「尻振りダンス」の印象が強烈だったわけだ。

『The Road to Memphis』
一度見たら忘れられない、ジャケット写真

ボビーのライブをはじめて観たのは2023年7月18日、ロンドン、カムデン・タウンの小さなライブハウス。映画で見たコッテリファンキー・ブルースを期待して観に行ったところ、ステージに登場したのはボビーとロレッタ・ラレット・ハリス・ウィルソン(女性ダンサー兼シンガー)の2人だけ。今思えば、当時はパンデミックとロシアのウクライナ侵攻に伴うコスト上昇(特にエネルギー価格急騰)により、バンドを連れてツアーに出ることができなかったんだろう。

カムデン・タウンの小さなライブハウス
バンドなしには驚いた

でも、これがいい方向に働き、アコースティックギターの弾き語り、ハーモニカの「吹き語り」を観ることができた。これは僕が一番観てみたかった、生の(raw)ブルースだ。ギトギトしたブルースとは全く違う、「生成りの」ボビーとアコースティックセットという嬉しい誤算、すごいものを観てしまった。

デキてる二人(たぶん)

今、ミシシッピ州のジュークジョイントに行っても、これほどシンプルなパフォーマンスを観ることは難しいだろう。

終演後、ボビーはファンのサインや写真撮影の要望にできるだけ応えていた。マネージャーから「ボビー、そろそろ行かなきゃ」と言われても、しばらくファンとの交流を続ける姿が印象に残った。

終演後、若いファンをステージに呼び込むボビー

その2年後、2025年11月にボビーの来日公演がアナウンスされた。コスト高も続いているし、また弾き語りだろうと思っていたら、なんとバンドと一緒に来日するという。これは観たい!というわけで、初日、2026年1月5日のセカンドステージのチケットを取った。92歳になるボビー、どんなショウを魅せてくれるだろうか。

2026年1月5日セカンドステージ
会場はBillboard Live TOKYO、「撮影可」の案内が。

Billboard Live TOKYO
撮影可

バンドがスティーヴィ―・ワンダーの「Superstition」のカバーで会場を温めたところで、ボビー登場。今夜もロレッタ・ラレット・ハリス・ウィルソン(女性ダンサー兼シンガー)と一緒だ。だいぶ脂っ気は抜けたが、冒頭から下ネタ連発、映画で観た通りのボビーだ。

一見して仕立てのよいスーツを着こなすボビー

音符の空白と「溜め」から生まれるグルーヴ。これは凄い。

ロレッタとのデュエットや客席練り歩き、と色々な演出であっという間の100分間。

デキてる二人(確信)

何度目かのアンコールに応えた最終曲は「When The Saints Go Marching In」、サッチモとは意外な選曲だった。大盛り上がりで終演。

嬉しそうにサインをしてくれる
レコードにサインをもらい、一緒に写真を撮ってもらった

とんでもなく素晴らしいパフォーマンスだったので、会場を出てすぐに翌日のチケットを買い求めた。

2026年1月6日セカンドステージ
2日目もボビーとバンドは絶好調で、ねちっこいブルースを連発。


ボビーは、ショウの中盤でスタッフに椅子を持ってきてもらい、ステージ中央で座りながら演奏を始めた。タバコをくゆらせるように、目を閉じて情感たっぷりにハーモニカを吹く。さすがのボビーも2日間で4ステージは疲れたか?

しかし、曲が終るとギタリストからストラトキャスターを借りて、左足を踏み鳴らしながら弾き語りを始めた!

驚いた、突然の弾き語り

椅子に座ったのは、スムーズに弾き語りに入るためだったのだ。バンドメンバーは袖にはけることなくボビーを静かに見守っており、この弾き語りパートは予定外だったのでは?期せずして、本物のブルースを聴けて最高だ!

終盤、歌いながら客席を練り歩く場面では興が乗ったのか、今夜は2階席まで上がってしまった。

2階まで歩いて上がっちゃったボビー

会場は大盛り上がりで、大歓声の中、終演。

終演後は会場内に留まって観客のサイン、写真撮影の要望に応える。今夜もマネージャーに「ボビー、そろそろ行かなきゃ」と急かされても、しばらくファンとの交流を続けた。根っからのエンターテナーだ。

物販で買ったレコードにサインをもらう

ブルース・サヴァイヴァー
マディ・ウォーターズ、リトル・ウォルター、ジミー・リード、エタ・ジェイムズ、ハウリン・ウルフ、マディ・ウォーターズ、ボビーと共演歴のあるシカゴのブルースマンたちは、みんなとっくに天国に行ってしまった。2026年1月に、最後のブルース・サヴァイヴァー、ボビーのステージを心ゆくまで堪能できた幸運を噛みしめる。

『The Road to Memphis』の中で、ボビーは「年間250~300のステージをこなす。休んだのは41年間で6週間だけ。休むと音楽に飢えて無性に恋しくなるんだ」と語っている。当然、現在はそれ程のハードワークではないと思うが、太平洋を越えて来日してくれたボビーとバンドに心から感謝したい。

エピローグ
この翌週、ロン・カーターの東京公演に行った。ロン・カーター88歳、ボビー・ラッシュ92歳。両者ともすでに円熟の境地にいるものの、「年齢はただの数字だ」と思えるようなインスピレーション溢れる演奏だった。

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