グラナダについて
グラナダはスペイン南部、アンダルシア州グラナダ県の県都である。地政学的にはヨーロッパ大陸のほぼ最南端に位置し、ジブラルタル海峡を渡れば、そこは北アフリカ・モロッコだ。

グラナダの歴史は、イスラム勢力とキリスト教の摩擦と交錯の歴史である。8世紀初頭から15世紀にかけてイスラム勢力がイベリア半島の大部分を支配した。1230年頃には「ナスル朝グラナダ王国」を建国。その後、キリスト教勢力による国土回復運動「レコンキスタ」が進むと、イスラム勢力は徐々にイベリア半島南部へと押し戻され、1492年にグラナダ王国がカトリック両王(イサベル1世とフェルナンド2世)に降伏してナスル朝が滅亡し、イスラム勢力によるイベリア半島支配は終焉を迎えた。
つまり、約800年におよぶイスラム文化の影響とその後のキリスト教文化が共存する街、それがグラナダだ。

グラナダはフラメンコの本場でもある。特に、サクロモンテ地区の「クエバ(洞窟)」では伝統的なフラメンコを観ることができる。

今日はアルバイシン地区を中心に散策し、カテドラルを訪れ、夜はサクロモンテ地区の洞窟でフラメンコを観る。
僕は観光の初日に一番の名所を訪問する。悪天候で満喫できなかったり、気に入ってもう一度訪問したくなった場合でも、滞在中に再訪できる可能性を高めるためだ。その原則に従えば、アルハンブラ宮殿は初日(今日)に訪れるべきところだが、チケットが取れなかった。チケットを手配したのは2026年1月27日のことだが(訪問の3ヶ月前)、その時点で5月2日(土)のチケットが売り切れていたので、仕方なく翌3日(日)のチケットを取った。同日グラナダの宿を予約したら、すぐにホテルから「早急に宮殿のチケットを確保して」と連絡があった。それ程人気な観光スポットだったのだ。
グラナダを訪問するなら、まず最初に宮殿のチケット入手可能な日程を確認することをお勧めする。旅のプランニングは、1)宮殿のチケット入手 → 旅程の確定、2)航空券/電車のチケットとホテル予約、という手順にした方がいいと思う。せっかくグラナダまで行ったのに、アルハンブラ宮殿を見ないのは「サビのない歌」のようなものだから(「クリープを入れないコーヒー」でも可)。
7:30 起床
曇りの予報なので、朝食前にホテル周辺を散策して天候を確認。昨夜雨が降ったらしく、路面が濡れていた。気温14℃と過ごしやすいが、空は雲に覆われている。スペインといえば突き抜けるような青空を期待していただけに、これは困った。


8:00 朝食
以前マドリードやバルセロナで宿泊したホテルと比べるとやや質素に見える朝食だが、必要にして十分。




パンをナイフで二つに切って生ハムとチーズをはさんで食べると、シンプルに美味しい。


9:20 ホテル出発
宵っ張りの国らしく、街を歩く人はまだ少ない。


ホテル付近のカトリック両王(イサベル女王とフェルナンド2世)の霊廟がある「王室礼拝所」とカテドラル(大聖堂)の外観を見る。


礼拝堂の前の道路にはカトリック両王の「聖ヨハネの鷲と紋章盾」とザクロのモザイク。これは川の小石を組み合わせた、グラナダの伝統的な石畳のモザイク舗装だという。「グラナダ(Granada)」はスペイン語でザクロを意味する言葉でもあることから、ザクロが市のシンボルとなったそうだ。ホテルを出て数分のところでこの路上のアート、グラナダ芸術度高し!


坂道を上り、サン・ニコラス展望台に向かう。


アルバイシンはイスラム教徒によって築かれたグラナダ最古の街並みが残る地区。城郭都市として造られたため、道が入り組んで迷路のようだ。


白壁とイスラム式の建物。はやくも異世界に入り込んでしまった。




9:45 サン・ニコラス展望台


サン・ニコラス展望台に立つと、眼前にはアルハンブラ宮殿、その背後には雪を戴くシエラ・ネバダ山脈が広がる。壮観の一言。





15分程眺望を楽しんでいると、ツアーバスから続々と観光客が降りてきて、広場は混雑し始める。サン・ニコラス展望台は、観光客が押し寄せる前の早朝に行くのがオススメ。


アルバイシン地区で最も高い場所に位置するサン・ミゲル・アルト教会を目指して歩き出すと、太陽が出てきた。そうこなくっちゃ。


多くの家の壁に「グラナダ焼」の絵皿が飾られている。


ふと見上げると、伝統を守る街並みと商業主義の象徴「コーラ」の看板が見事に融和していた。グローバルブランドマネジメントの観点から言えば、このようなブランドロゴとパネルの大胆な現地化には課題がある気もするが、街に美しく溶け込んだ「広告宣伝」、最高じゃないか。


石畳の坂道をひたすら登る。


11:00 サン・ミゲル・アルト教会


アルハンブラ宮殿とアルバイシン地区を見渡せる。

左にアルハンブラ宮殿、右にアルバイシン地区





手前に教会、その奥にアルハンブラ宮殿を望む。キリスト教とイスラムが交差した、グラナダならではの景色だ。


来た道を戻る。




11:30 一休み
サン・ニコラス展望台まで戻り、レストランで一服。


幸い、宮殿がよく見える一番奥の席が空いていた。スペイン産サンミゲルで休憩。それにしてもスペインのオリーブは本当に美味しい。


30分ほど休んで店を出る頃には満席に。グラナダを観光するなら、「早起きは三文の得」だ。15分、30分が大きな違いを生む。


さらに坂を下り、アルバイシン地区の中心部に戻る。












12:30 昼食
カルデレリア・ヌエバ通り付近のバルで軽い昼食。


飲み物を一杯注文すると、タパス(つまみ)が無料で一皿付いてくる仕組み。ビールとミートボール、追加でミニ生ハムチーズサンドと「ハチミツで刺激したナス」を注文。素朴な味わいで軽食にぴったりだ。


昼食後、マドリード在住のパブロお勧めのレコード屋を廻るが、あいにく収穫なし。ちなみにスペインのレコード屋は14時から16時頃までシエスタ休みで一時閉店するので、要注意。



時間があればゆっくり見たい店

十字架の日について
「十字架の日(Día de la Cruz)」は、毎年5月3日に開催されるアンダルシア地方(グラナダやコルドバなど)の伝統的なお祭り。街には色鮮やかな十字架が飾られ、女性は華やかなフラメンコドレスを身にまとって髪に花を飾り、音楽と踊りで春の訪れを祝う。
十字架が飾られ、おめかしした女性たちが意気揚々と歩いている。




14:45 アルハンブラ宮殿行きバス停
明朝の宮殿訪問に備え、ホテル付近のバス停を事前確認。これ大事。


15:00 カテドラル(大聖堂)
ルネサンス建築の傑作といわれるカテドラルへ。円柱とアーチに支えられた高い天井と、白壁と金の装飾のコントラストが印象的(内部は写真撮影禁止)。


15:30 アルカイセリア
アラブの雰囲気を残す商店街「アルカイセリア」。シルク製品や工芸品、土産物屋がある。




健気に子供が働いているのを見て、同じような歳の頃に家業を手伝ったことを思い出した。

16:30 ホテルで休憩
ロストしたバゲージはまだ届いていない・・・。
17:45 夕食
1917年創業の老舗レストラン「ロス・マヌエルス(Los Manueles)で夕食。外の空気が気持ちいいので、レストランに面したビブランブラ広場(Plaza Bib-Rambla)のテーブル席に座る。


スペイン風コロッケ「クロケッタ(Croqueta)」(スペインに来てコロッケがすっかり好きになってしまった)と、このレストランの定番肉料理「豚のひじ肉のロースト」を注文。コロッケはサクッとした衣とクリーミーなベシャメルソースの組み合わせが美味。具にしっかりと塩気と旨味があるので、ソースは不要だ。


豚肉はナイフがスッと入る柔らかさで、こってりとして脂っぽい皮はジューシー。


食事をしていると、伝統衣装で着飾った女性たちが横切っていく。なんだか、みんな楽しそう。


19:00 大道芸
夕食後、広場で大道芸を楽しむ人々を見る。芸人の一挙手一投足に集中して、大人も子供もスマホなんて見ていない。


気がつくと、このどこか懐かしい光景を10分も見ていた。しまった、早くフラメンコの会場(タブラオ)に向かわなくては。
Googleマップの指示に従ってダーロ川沿いを歩くと、すれ違えない程の人出。マップの表示よりも時間がかかって焦る。


19:45 クエバ・デ・ロス・アマヤ(Cueva de los Amayas)
開演15分前に到着すると、すでに長い列ができていた。

サクロモンテ地区のフラメンコについて
サクロモンテ地区にある洞窟は、迫害を逃れた「ロマ(ヒターノ)」が15世紀以降に定住した場所(「ジプシー」という呼称には差別的なニュアンスが含まれるため、「ロマ」への言い換えが進んでいる)。洞窟で受け継がれてきた独特な歌や踊りは、グラナダ独自のフラメンコ「サンブラ」へとつながっていった。
すでにステージ正面の席は埋まっていたので、店の一番奥の席に座ってビールを頼む(チケット代に1ドリンク含まれる)。


20:00 開演


踊り子の「バシッ、バシッ」と足を踏み鳴らす鋭い音が洞窟の白壁に反響し、至近距離で観る踊りは凄い臨場感だ。スパニッシュギターの音色は柔らかいが、歌声はシリアスで、踊り子は一度も笑みを見せない。
マドリードとバルセロナで観たフラメンコは、日々の「喜怒哀楽」を表現していると感じたが、ここのフラメンコからは、もっと切実な「哀」と「怒」のようなものを強く受け取った。



マドリードやバルセロナといった大都会の洗練されたショーとは違って、サクラモンテの洞窟は緊張感に満ちており、その空気は張り詰めていた。僕には、かつて疎外されたロマたちの哀しみや怒りまでが、洞窟のフラメンコに残っているように感じられた。
21:00 終演


かつてロマの住居であった洞窟を出ると、眼前にはイスラム王朝の宮殿、アルハンブラ。グラナダは街の至るところで、多様な文化の交差と共存を肌で感じることができる。


ライトアップされた宮殿を見ながら、ダーロ川沿いに来た道を戻る。


先ほどの人混みはすっかり解消し、広場では音楽に合わせて女の子たちが踊っていた。


子供たちは「だるまさんがころんだ」で遊んでいる。なんとものどかな光景だ。ちなみに「だるまさんがころんだ」は、スペインを含むヨーロッパ諸国やアメリカなどに似たような遊びがあるそうだ。

22:20 カルメン広場
ホテルには戻らず、昨夜メアリーが教えてくれた「十字架の日」のお祭り会場に行ってみる。広場にはザクロ(Granada)が描かれた青いアーチと赤い十字架が飾られていた。


舞台では、女性たちが情熱的な音楽に合わせて優雅に踊っている。正直なところ、踊りはあまり揃っていないが、彼女たちの顔は誇りに満ちている。


こういう地方の街で出会う人々の素朴さはいい。今日一日でスペインのことをもっと好きになってしまった。

23:10 帰宿
結局、ロストしたバゲージは届かなかった。明後日にはバルセロナに移動するので、「明日中に届かないと面倒なことになるな」と思いながらビールを飲んで洗濯。

24:30 就寝
明日はいよいよアルハンブラ宮殿だ。

