上白石萌音(以下、上白石)のツアーファイナルを東京ガーデンシアターで観た。
会場前には数え切れないほどの祝花が並び、キャパシティは都内最大級の8,000席。




最初の一音
開演直前、調弦のためにピアノが「ラ」の音を鳴らす。2015年10月19日のデビューライブもアコースティックギターの「ラ」で始まった。そして10年前と同様、今夜も第一声はアカペラ。変わったことと言えば、伴奏が「アコギ一本」から「フルバンド + サックス + ストリングスカルテット」になり、WOWOWの生放送があることくらい(結構変わったか?)。
ライブのコンセプトは、デビューアルバム『chouchou』(2016年)と新作『texte』(2026年)同様、「映像作品にまつわる楽曲を歌う」。19曲中12曲がカバー、残り7曲が自身のオリジナル曲というセットリスト。
【セットリスト】( )内は原曲歌手
- アルデバラン(AI)
- 時をかける少女 (原田知世)
- 白い泥
- ハッピーエンド
- Woman “Wの悲劇”より(薬師丸ひろ子)
- 366日(HY)
- 一縷
- BOTH SIDES NOW (ジョニ・ミッチェル)
- From The Seeds
- なんでもないや (RADWIMPS)
- AUDITION (エマ・ワトソン)
- On My Own(ミュージカル”レ・ミゼラブル”より)
- SMILE(ナット・キング・コール)
- 変わらないもの(奥華子)
- スピカ
- Swallowtail Butterfly ~あいのうた~ (CHARA)
- Loop
アンコール
- 25コ目の染色体 (RADWIMPS)
- 奇跡のようなこと
10年目の「On My Own」
10歳の頃から歌い続けているという「On My Own」は、当時練習に使っていた楽譜を見る度に、今でも新たな発見があるそうだ。このツアーでもメロディの一部に劇的な変化があった。上白石の深化は止まらない。
「クセ弱な」歌声
上白石のクセの弱い歌声はプレーンヨーグルトのようだ。レモン、オレンジ、ブルーベリー、ストロベリー、砂糖、ハチミツ、何をトッピングするかで、まったく味わいが変わる。この「上白石萌音 = プレーンヨーグルト説」を提唱するにあたり、一番分かりやすい例が「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」だ。原曲を歌うCHARAの物憂げな歌声は個性的で、特にサビの熱唱には心臓をギュッとつかまれて火傷を負ったような気持ちになる(褒め言葉です)。一方、上白石の伸びやかで真っ直ぐな歌声はスーッと心の奥まで届き、いつまでもそこに留まっている感じ。このようにどんな曲でもプレーンな歌声で「上白石節」に変えてしまうのが、「歌手・上白石萌音」の最大の特性である。つまり、「クセが弱い」こと自体が「強力なクセ」になっているのだ。
変わらないもの
上白石の歌唱は2015年のデビューライブ当時から変わらない。当然、技術的に熟練して、低音が少し豊かになり、MCは饒舌になったものの、観客一人一人に丁寧に歌を届けようとする姿勢は、この10年間、常に同じように見えた。ただ、その歌声が届く観客の数は、100人から8,000人(プラスWOWOW視聴者)へと増えた。これは凄いことだ。






ザ・上白石萌音ショウ
今回のツアーは「映像作品にまつわる楽曲を歌う」という背骨を得て、歌手活動10年間の集大成、まさに「ザ・上白石萌音ショー」と呼びたくなるようなライブだった。カバー曲が大半を占めるのに、これまでのライブで一番上白石らしさを感じた。長い時間を生き抜いてきたカバー曲と肩を並べるオリジナル曲、特に「一縷」「スピカ」「奇跡のようなこと」も素晴らしかった。


アンコールの前には今秋のオリジナルアルバム発売と、故郷・鹿児島、横浜でのライブが発表された。
鹿児島の宿を探さなくては。
上白石さんのデビューライブを観た話はこちら↓
“yattokosa” 26 ≪texte≫ 神戸公演はこちら↓




