Day 4【Belfast: Encounter with Van Morrison & Night 2】(2/5/2026)

van-morrison Van Morrison

ヴァン・モリソンのこと
彼の音楽をはじめて聴いたのは40年前、佐野元春のラジオ番組で流れた「Moondance」だった。ロマンティックな歌詞、ジャズフィーリング溢れるリズムとメロディに少しアンニュイなボーカルが乗る。それでいて聴感はポップ、こんな音楽はそれまで聴いたことがなかった。ブルース、ジャズ、カントリー&ウェスタン、フォーク、ゴスペル、ロックン・ロール、ソウル、リズム&ブルースといった幅広いアメリカンミュージックとケルトミュージックの融合こそが、彼の音楽を唯一無二なものにしていた。

中学生だった僕にはLPレコードを買う余裕がなかったので、しばらくはラジオから流れる曲とベスト盤CDを聴いていたが、1993年に大学の卒業旅行で行ったロンドンのHMVで『Moondance』のレコード(ドイツ盤)を買った(それから30年後の2023年3月に、そのレコードにヴァンからサインをもらうことができた。いずれこの話も書きたい)。

アルバムリリースの度にリアルタイムでレコードやCDを購入するようになったのは、『Too Long In Exile(1993年)』からで、それに続く傑作ライブアルバム『A Night in San Francisco(1993年)』、『Days Like This(1995年)』、ジョージィ・フェイムとの共作ジャズアルバム『How Long Has This Been Going On(1996年)』、『The Healing Game(1997年)』辺りのアルバムを熱心に聴いた。その後、給料の緩やかな増加とともにバックカタログを買い揃えていった。以来、彼は「ライブを観たいミュージシャンリスト」のトップランクに留まり続けた(当時は「来日しない最後の大物ミュージシャン」と言われていた)。

8:00 朝食
チェックアウト時間は11時。つまりヴァンとエンカントできるチャンスは、あと3時間。

昨日と同じメニュー
ヨーグルトも食べた

10:00 ついにその時は来た!
ヴァン御大はラウンジから女性アシスタントと一緒に廊下に出てきた。僕が控えめな声量で、礼儀正しく「少々よろしいですか?あなたのライブショーを観るために日本から来ました」と話しかけると、「あぁ、日本から来たの?」と少し感心した様子。これまで彼が創ってきた美しい音楽に対する感謝を簡潔に伝え、「写真を一緒に撮っていただけますか?」と尋ねると快諾してくれたので、アシスタントにスマートフォンを渡す。彼女が写真を撮り出すと「日本のどこから来たの?」と質問された。えっ!?質問されるなんて想定外なんですけどっ!辛うじて「東京からです」と答える(簡単な質問でよかった)。ありがたいことに彼女が7枚も写真を撮ってくれたお陰で、スマートフォンには2人でカメラの方を向いている写真と、顔を見合わせて話している写真が残された。さらに、ジャケットのポケットから最新アルバム『Remembering Now』のCDスリーブを取り出して、「サインをいただけますか?」とお願いしてみた(現役ミュージシャンに対して最大の敬意を示すには、最新アルバムにサインをお願いすることが最適だと考えた)。御大は再び快諾してくれ、サインをするためにわざわざソファに座り、「お名前は?」と訊き(これも想定外!)、サインに”To Masa, All The Best”と書き添えてくれた。そして、「会えてよかったよ」と言ってホテルを出て行った。

サインを書き始めた時は絶好調だった新品のサインペン
なんで急に調子悪くなるかなー?文字がかすれ始めた時は焦った

これが僕の身に起こった、わずか1分程の出来事である。「気むずかしい」パブリックイメージに反して、彼は終始寛大で親切だった。写真を一緒に撮ってもらえたことも、サインをもらえたことも嬉しかったが、一番嬉しかったのは、彼が創った素晴らしい音楽に対して感謝の気持ちを直接伝えられたことだ。「やらぬ後悔よりやる後悔」、「人生はなにが起こるかわからない」、そんな思いを強くした朝だった。

エンカウントしたホテルの廊下
奥のソファに座ってサインしてくれた

Facebookに投稿すると、世界各地から「おめでとう」「アメージング」「やったね」「ファンタスティック」「ラッキー」「あなたはそれに値するよ(You deserve it.)」といったコメントが届き、みんな自分のことのように喜んでくれた。こんなに色々な表現で祝福されたのは生まれてはじめてのことだ。

11:00 チェックアウト
海沿いを走る電車でベルファスト中心部へ移動。

電車でベルファスト中心地へ
海沿いを走る

常宿のホテルの経営が変わり、宿泊料金が上がってしまったため、強風の中、はじめてのホテルに向かう。

12:30 チェックイン
本来チェックインは15時以降だが、部屋に入ることができた。とにかく外は風が強いので、これは助かる。

明日はバスでダブリンに移動する予定で、さっき予約確認メールが来ていたことを思い出し、出発時間と場所を確認。チケットは「Omio」(電車、バス、船の予約サイト)経由でnational express(バス運営会社)のバスを予約した。メールをチェックすると、その両者からほぼ同時に確認メールが届いおり、出発時間は両者とも「10:50」。でも、よく見ると「Omio」のチケットに記載された乗車場所は「Belfast, Upper Street / Wellington Street」。一方、「national express」の乗車場所は「Belfast, Grand Central Station」

予約サイトから届いたチケット
バス運営会社から届いたメール

2025年6月に利用したベルファスト発、ダブリン着のバスは「Omio」記載の「Belfast, Upper Street / Wellington Street」から乗った記憶がある。でも、さすがにバスの運行会社の情報の方が正しいのではないか?うーん、混乱する。という訳で、フロントに確認に行ったら、「最近、ダブリン行きのバスの乗車場所はグランド・セントラル駅に変わったのよ」と教えてくれた。去年乗車したところに行けばいいだろう、と考えていたので危ない、危ない。確認、重要。

13:30 グランド・セントラル駅下見(重要)
明日の乗車場所を確認し、Dragon Recordsへ。ベルファストにはレコード屋が数軒あるが、これまでに買い物したことがあるのはこの店だけ。今回はoasisの12インチシングル「Wonderwall」を購入(£16。新品みたいにピカピカだけど、これってリイシュー?)。

Wonderwallの12インチシングル
Dragon Records

Dragon RecordsのFacebook↓
https://www.facebook.com/DragonRecordsBelfast

次に、何はなくても酒だ。僕は健康数値の関係でビールやワインより蒸留酒の方が好ましく、日本からは「下町のナポレオン いいちこ」を持参したのだが(毎度持ってくる)、今回はロンドンのホテルに置いてきた。そこで飲みたいのが、マークス&スペンサー(M&S)のウォッカ(£14.50)。”Extra Smooth”のキャッチフレーズの通り、癖がなく飲みやすい。この酒を確保してアイルランドで飲む酒は一安心。

M&S
アルコール売り場
M&Sプライベートブランドのウォッカ

14:40 昼食
強風でカラダが冷えて温かいものを食べたくなり、別のミニスーパーで「チキンを巻いた何か」と「フライドチキンとフライドポテトにチーズを掛けたもの」を買ってホテルでビールを飲みながら食べる。間違いなくすごいカロリー。

遅い昼食
→ チキンを巻いた何か
← フライドチキンとフライドポテトにチーズを掛けたもの

18:30 徒歩でライブ会場へ

昨年8月に心に残った、映画「独裁者」の演説の一節

19:00 ヴァン・モリソンライブ2日目
今日はパブロ(スペイン人)がチケットを譲ってくれたお陰で3列目の席。前の席には昨夜も会ったスティーブン(ロンドン在住の北アイルランド人)。よく会うなぁ。

今夜はここから
キャパシティ350~500人の小さなホール

会場内では2人のブライアン(日本在住のアイルランド人とベルファスト在住のイギリス人)と挨拶を交わす。ライブ開始前、隣の席のトロントから来たカナダ人は「ヴァンを45年間観続けてきたが、昨夜のライブが1番よかった」と言う。他のファンも昨夜のカバー曲、昔の曲、新曲のバランスのよいセットリストと力強い歌声を絶賛。80歳を過ぎてピークを更新してくるとは、恐るべし。

20:00 開演
ステージに現れた御大は、ハットを被り、サングラスを掛けて上下揃いのスーツをビシッと着こなしている。今朝会った時とはオーラが違う。

2日目のライブは初日とはガラッとセトリを変えてきた。久々の演奏となった「Moondance」、フェンダー・ローズを弾きながら歌う「Solid Ground」がセットイン。

今夜のハイライトはヴァン自作のブルース曲「Ain’t Gonna Moan No More」。終盤の長いうめき声(moan)の繰り返しに歓声が上がり、スタンディングオベーションが起こる(録画できなかったのが悔やまれる)。ライブで何度も観たことのある曲だが、これほどねちっこい歌唱ははじめて。昨夜の打ち解けた雰囲気とは一変してMCは一度もなく、シリアスにショウは進む。

昨年12月に亡くなったギタリスト、スティーブ・クロッパーへの追悼だろうか、「Help Me」の間奏では「スティーブ・クロッパーのソロだ!」とギタリストに指示を飛ばし、ギタリストは見事にスティーブ風のエッジの効いたギターソロを披露した。

昨夜と今夜のライブで印象に残ったのが、バンドメンバーが楽しそうに演奏していたことだ。御大のライブは大まかなセットリストは決まっているものの、次の演奏曲や誰がソロを取るかを即興で決めることが多く、演奏者にとっては緊張感が高い(セットリストにない曲を演奏することも多い)。

即興の連続

アンコール「Gloria」の途中で御大が退場した後、バンドメンバーが緊張から解き放たれたようにソロを回すのが定番だが(一節によると、御大はこの長いソロ回しの間に会場を一足早く去るのだという)、昨夜は女性コーラス2人のうち、ベテランのダナ・マスターズがアドリブソロを披露し、その歌唱にぶっ飛んだ(ダナがソロを取るのははじめて観た)。今夜も深く音楽的なソロが炸裂。この人が口を開けば、ため息すら音楽に聴こえそうだ。本当に素晴らしい。

ダナのソロは4:30~

終演後、昨夜サインをお願いしていたツアーマネージャーP氏のところに行くと、「今日は何も起こらなかったよ」と。「?」とキョトンとしていると、「彼に会っただろう?今朝会ったからそれで十分だ、と言ってたよ」。今朝の御大との遭遇は一生忘れられない思い出となったので、P氏に「確かに十分だよ。とにかく、ありがとう」とお礼を言い、サインされなかったレコードジャケットを受け取る。

会場を出ると、メッセンジャーで何度かやりとりしたことのあるケネス(ベルファスト在住)が声を掛けてくれ、土曜の夜のDJパーティに誘ってくれた(その晩はアーマーに宿泊するので丁重にお断りした)。再会したダイアナ・セオ夫妻(ベルギー人 ← 後日、図らずもこの夫妻と小旅行をすることになる)と一緒に写真を撮っていると、パブロが友達ミケル(スペイン人)を紹介してくれる。彼はキース・ジャレッドの公演を観るために何度も来日したことがあるそうだ。こうして友達が増えていくのはいい感じだ。

22:00 ライブ会場を去る
ベルファスト市庁舎をグルッと回ってホテルに戻る。

美しいベルファスト市庁舎

23:00  カップヌードル(カレー味)の夜食

温まって助かる

25:30 大きな達成感とともに就寝

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